アイデアのちから [ チップ・ハース ]の紹介です。

アイデア関連本で名著のひとつではないでしょうか。
アイデア本の中でも、「アイデアのちから」は、アイデアとは何かとか、いかにアイデアを生み出すかではなく、いかに記憶に残る生きたアイデアとするかについて書かれています。

本書では、生きたアイデアになるには、記憶に残る=記憶に粘る(焼きつく)必要があるとしています。
記憶に焼き付くアイデアは広まりやすく、アイデアとして影響力を発揮するようになります。

記憶に焼きつくアイデアの秘密はなにか?記憶に粘るためのセオリーがあるのか?といった点について論じられています。

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6原則

記憶に残ろアイデアにするための6原則が示されています。

・単純明快
・意外性がある
・具体的
・信頼性
・感情に訴える
・物語性がある

この原則を一文にするなら、「単純明快で、意外性があり、具体的で、信頼性があって、感情に訴える物語」ということになります。

英語で言えば、「Simple Unexpected Concrete Credentialed Emotional Story」となり、頭文字をとって「SUCCESS」ルールを提唱しています。

これまでのメジャーな生きたアイデア、あるいは記憶に残りやすく広まってきた都市伝説の類も、このSUCCESSルールに則っています。

知の呪縛

SUCCESSルールを邪魔するのは知の呪縛と言われるものです。

知の呪縛とは、例えば曲を知っている人が叩くリズムは、曲を知らずに聞いてる聴き手には伝わらないというものです。
曲を分かってリズムを叩いている人からすると、曲にあったリズムを表現していて、むしろそれにしか聞こえません。
一方、曲を知らずにリズム音だけ聞いている聞き手からすると、意味不明な打撃音の羅列でしかありません。

上の例から分かる通り、自分の知識を他人と共有するのは難しく、聴き手の気持ちが分からないと同様に、知識がない状態が分からずに伝えられないことが多々発生します。

この知の呪縛には常に気をつけておかなければなりません。

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単純明快

核となる部分を見いだして伝えることです。

例として、司令官の意図があげられています。
刻一刻と変化する戦場において、ある指示が指し示す行動は各部隊の置かれた状況と役割によって異なります。
そのときに受け手が正しく理解して判断できるものでないと意味をなしません。

ポイントは以下の通りです。

・最終的な目標が分かっていれば細々した指示は不要
・単純明快とはアイデアの核となる部分を見きわめる
・余分なものをはぎ取って一番大切な本質をむき出しにする
・1つのことだけ伝える

もう一つの大切なポイントは、リードの埋没を防ぐことです。

大量の情報にリードを埋没させてしまうと、覚えられることはありません。
最も重要なポイント、本質をしっかりと伝え、追加情報は後から小出しにします。
すでに持っているイメージを使う「リンキング」も役に立つテクニックです。

意外性

驚きで関心をつかみ、謎や知識の隙間で関心をつなぎとめます。

一見矛盾するようですが、計画的な意外性をつくります。

人は驚くと推測機械が働かず、これで注意を喚起することに繋がります。
なぜなら、驚くと自分がなぜ驚いたかの疑問を解消しようとするからです。

驚きで関心を掴んだら、謎で関心をつなぎとめます。
放っておくと、関心が薄れてしまうので、謎や知識の隙間を作って、好奇心を掻き立て関心をつなぎとめなければ記憶に残りません。

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具体的

理解と記憶を促したり、協調を促すには具体性が必要です。

具体性のポイントとしてあげられているの、「五感で検証できるもの」、「特定の人々の特定の行動」です。

具体的であることで聞き手の理解を助けます。
抽象性は具体的な土台のうえに作られるので、はなから抽象的では記憶に残りません。

協調を促すために共通の普遍的な言語で話すには、具体的である必要があります。

自分は知っていても他人は知らないことを忘れがちなために、具体的な伝え方ができないことがあります。
ここでも知の呪縛には要注意ですね。

信頼性

仮に都市伝説であっても、もっともらしく感じたり、信じてもらう必要があります。

信頼性には、外部からの信頼性と内在的信頼性があります。

外部からの信頼を得るのにもっともメジャーな要素は権威性ですが、この権威性は有名人や一部の天才だけのものではありません。
有名人でなくても誠実で信用できるからという理由で認められることがあるからです。

内在的信頼性とは、細部がメッセージに具体性と実感を与え現実味を増し信頼性を得る事を指します。
ただし、その細部は偽りのない細部で、核心に迫る細部でなければなりません。

信頼を得られそうな要素として、統計があります。
この統計は関係性を示すのに使うもので、そのまま数字として示しても効果がありません。
ビジュアル化したり、他のイメージを利用することで、納得感をもって受け入れられます。

例えば、会社に関する統計で「事業のゴールを理解している社員は60%でした」と聞くともっともらしい数字でさらっと流しそうですが、これをサッカーチームに当てはめると、「11人のうち5人近くもが攻める方向すら分かっていない」ことになります。

検証可能な信頼性もよく使われる手法として紹介されています。

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感情

感情に訴えて、心にかけてもらうことで、記憶に焼きつきます。

ポイントとしては、「関連付け」、「底辺部だけでない自己利益に訴える」、「アイデンティティに訴える」ことです。

感情でなく、理性に訴えても、分析の帽子をかぶせてしまい、行動に結びつきません。

意味の拡張 乱用され変異し薄まってしまう。
関連付けとは、相手が心にかけているものと、まだ心にかけていないことの間に関連性を持たせることを指します。

底辺部だけでない自己利益に訴えるというのは、マズローのピラミッドでいう底辺だけでなく、面で意識して訴えることです。
人は自分はマズローのピラミッドの上部にいて、他人は(訴える相手は)底部にいると勘違いしがちだそうです。
実際は、そもそもピラミッドでなく、それぞれの欲求は同時に存在します。

上記の自己利益だけでも解決しない場面があり、むしろ逆効果の場合もあります。
その時はアイデンティティに訴えることが必要です。

共感は全体からでなく個々の事情から生まれるものです。
分析の帽子を脱がせ、特定の個人への共感を生むことで記憶に残ります。

アイデアを相手がすでに心にかけていることと関連付け、自己利益に訴えるが、同時にアイデンティティにも訴える、そのアイデンティティにはなりたい人物像も含まれる。
そして聴き手にとってどんなメリットがあるかを考える時は、マズローの欲求段階の底辺を脱することで、感情に訴え記憶に粘るアイデアに育てられます。

物語性

適切な物語が、人を行動に駆り立てます。

物語には、以下のようなものがあります。

・シミュレーションとしての物語(行動の仕方を教える物語)
・励ましとしての物語(行動を起こすエネルギーを与える物語)

キーワードは、励まし、挑戦、創造性です。

物語は聴き手に登場人物の問題を解決させるだけでなく、聴き手自身の問題解決をも促すことができます。

物語はSUCCESの枠組みの大半を実現するので、物語は知の呪縛を打ち破ることができます。

 

せっかく生まれたアイデアも人知れず消えていくものが大半です。

しかし、本書ではアイデアは育てられるものであると説いています。

せっかく考えたアイデアを簡単に捨ててしまったりしないために、一度読まれることをおすすめします。