ZERO to ONE (ゼロ・トゥ・ワン)ビジネス書大賞にもなったピーター・ティールの書籍です。
ゼロから1を生み出すというタイトルからすると、起業家に向けた本のイメージですが、投資家目線でもみても有益な情報が詰め込まれています。
改めて読み直して、自分の普段の仕事や投資において得るものがあったので、簡単にまとめました。
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隠れた真実
隠れた真実がゼロから1を生み出すヒントです。
著者であるピーター・ティールは採用面接で「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」と問いかけます。
これは、どれだけ未来へと視点を近づけられるかを測っています。
なぜなら、未来は今を元にしているけど、今とは異なるものであり、世の中の人が信じている今の状況を超えたところに、隠れた真実があると考えているからです。
偉大な企業が目の前にあるのに誰も気づかない世の中の真実を土台に築かれる具体的な事例として、AirBnBやUber、Facebookが挙げられています。納得ですよね。
ポイントは、単純で振り返ればごく当たり前に見える洞察であるが、誰も見ていない場所に気づいた点です。
誰もが異論のない「常識」をもとに明るい未来を描いても何にもならなず、具体的な成功理由は周りからは見えないところにあるとしています。
垂直的進歩と水平的進歩
未来を考えるときに、進歩を2種類に分けて考えます。
一つは「垂直的に進歩」、もう一つは「水平的進歩」です。
垂直的進歩は、ゼロから1を生む進歩で、テクノロジーによってもたらされます。
水平的進歩は、1を横に広げるもので、成功例のコピーや組み合わせで作られ、グローバリゼーションが該当します。
垂直的進歩がなければ、今と何も変わらず、水平的進歩で作られた企業も競争にさらされるだけで、一貫して主張している独占を築けません。
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ピーター・ティールが考える起業の姿
1990年代前期から2000年代初期にかけてアメリカでおこったドットコムバブルの反省として、以下のような考え方が生まれました。
・少しずつ段階的に進むこと
・無駄なく柔軟であること
・ライバルのものを改良すること
・販売ではなくプロダクトに集中すること
しかし、ピーター・ティールは起業で必要な要素はこれの逆であるといいます。
1.小さな違いを追いかけるより大胆に掛けたほうが良い
2.できの悪い計画でもないよりはいい
3.競争の激しい市場では収益が消滅する
4.販売はプロダクトと同じくらい大切だ
完全な競争下では長期的に利益をだせず、競争の現実に目を向けずに些細な差別化に力を注ぐだけでは生き残れないとしています。
企業価値は将来に渡ってのキャッシュフローを生み出す力ですから、非常に重要なポイントです。
独占企業
他社のできないことをどれだけできるかで成功の度合い決まるとし、独占はすべての成功企業の条件としています。
独占企業の特徴
1.プロプライエタリ・テクノロジー
ビジネスの根本的な優位性。
自社の商品やサービスを模倣されない。
独占的優位性をもたらすうえで2番手より10倍優れている。
全く新しい何かを発明する。
既存のソリューションの改善なら、10倍以上の劇的な改善。
2.ネットワーク効果
そこに事業チャンスがあると見えないくらい小さな市場から始める。
3.規模の経済
規模拡大の可能性を最初のデザインに組み込む。
限界費用をほぼゼロにする。
例えば、ソフトウェア企業は販売増加にかかる限界費用がほぼゼロに近づく規模の経済の恩恵を受け取れる
4.ブランディング
プロプライエタリ・テクノロジーを背景に作られるブランド力
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独占を築く
どんなスタートアップもはじまりは小さいことを理解し、どんなスタートアップも非常に小さな市場から始めるべき。
失敗するなら小さすぎて失敗するほうが良いと言います。
理由は、小さな市場のほうが独占しやすいからです。
スタートアップが狙うべき理想の市場は、少数の特定ユーザーが集中していながら、ライバルがほとんどあるいは全くいない市場であると定義しています。
当然ながら、大きな市場は避けるべきで、特にすでにライバルがいる大きな市場は最悪です。
ありがちな考え方で、よく目にしますが、1000億ドル市場の1%を狙うような考えは危険です。
実際には、参入余地がないか、誰にでも参入できるため目標のシェアに達するのがほとんど不可能かのいずれかの状況に陥ります。
独占を築くことがマストなポイントですが、成長に必要なポイントを3つあげています。
・規模拡大
・破壊しない
・ラストムーバーになる
規模拡大
独占を築いた後は、正しい順序で市場を拡大することが大切になります。
その好例がAmazonです。
本という特定のニッチを支配して、次に周辺市場に拡大する過程を創業時から描いて世界最大の時価総額まできました。
破壊しない
攻撃的になったり、既存のビジネスを破壊するようなことはしない。
できる限り競争は避ける。
例として、ショーン・パーカーのナップスターがあげられていました。確かにといった感じ。
ライブドアもそうでしょうか。
ラストムーバーになる
特定の市場でいちばん最後に大きく発展して、その後何年何十年と独占利益を享受するほうが良い。
小さなニッチを支配して、そこから大胆な長期目標に向けて規模を拡大することが重要で、ファーストムーバーになる必要はない。
独占企業と非独占企業の違い
独占企業は自分たちの市場をいくつかの大きな市場の総和と定義づけることで、独占していないように見せます。
独占による利益を得ているわけですから、それを継続できるよう競争を避けようとするのは自然なことです。
一方で非独占企業は、様々な小さな市場が交差する場所を自分たちの市場と位置づけることで自社の独自性を主張します。
こじつけで作られたニッチな市場で、そもそもそんな市場はありません。
投資家的に将来の伸びを予測する場面でも、使える観点だと思います。
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べき乗則
自然現象や社会現象の多くを支配するべき乗則は起業の世界にも当てはまります。
例えば、ベンチャーキャピタルの投資は、一握りのスタートアップがその他すべてを大幅に上回るリターンをだすことで成り立っています。
分散ばかりを追いかけても機会を逃すけど、分散に極端に隔たりが出る「べき乗則」が万物の法則であることを認識して物事に取り組むようアドバイスしています。
ただ、投資と違って、仕事を選んだり、起業をするといった場面では悩ましい問題が出てきます。
同時に何社も起業できないし、キャリアを分散させることもできないからです。
起業家は自分自身を分散できないので、スタートアップにつぎ込む時間が最大の投資となります。
仕事を選ぶときも、それが価値あるものになると信じて、選択し、時間をつぎ込むことになります。
成長の著しい企業に入社すれば成功を手に入れられるように、べき乗則のもとでは、企業間の違いのほうが、企業内の役割(役職)の違いより大きくなります。
極端な例ですが、ぱっとしない会社のストックオプションを10%もらうより、Googleの0.01%のほうが価値が高い場合なんかです。
そして、あえて起業に挑むなら、べき乗則を心にとめることを促しています。
・ひとつのもの、ひとつのことが他の全てに勝る
・ある市場はその他すべての市場にまさる
・ある販売戦略が他のすべてを支配している
・ある瞬間がほかのすべての瞬間よりも重要になる
所感
詰まるところ、重要なのは何をするかなので、自分の得意なことに集中すべきだし、それが将来価値を持つかどうかを真剣に考えるべきと解いています。
起業も投資も、この本のように色々とヒントを得ることはできます。
あとは、自分の想像力を最大限使って、未来を考えろということでしょう。
投資は特に分かりやすいですが、誰かが言っていた情報や、流行っているという理由で、自分で考えずに行う投資は、必ずと言っていいほど後追いになり失敗します。
取るべきでないリスクは取らず、自分で考え計算したリスクをしっかりと取るべきですね。